目次
概要
アトラエース CLO-2725と日東工器 アトラエース QA-6500は、いずれも現場での信頼性が高い磁気ボール盤として知られています。どちらも鉄骨加工や橋梁補修など、シビアな環境で長年使われてきた実績があり、堅牢な構造と安定した穴あけ性能を備えているのが特徴です。一方で、HiKOKI BM36DA (2XP)は、同じ36Vクラスながらコードレス化とマルチボルト蓄電池の採用によって、従来機とはまったく違う使い勝手を実現した新世代モデルです。
BM36DAは36Vマルチボルト蓄電池と直流ブラシレスモーターの組み合わせにより、板厚25mmまでの鋼材に対して最大φ27mmまで対応するパワーを確保しつつ、全高149mm・質量約9.1kgというコンパクトさと軽さを両立しています。CLO-2725も同クラスの36Vバッテリを採用したコードレスタイプで、最大φ27mm・板厚25mmまで対応しながら、質量約9kgと取り回しに優れた仕様です。これに対し、QA-6500はAC1000kgfクラスの強力マグネットと1010Wモーターを搭載し、最大φ65mm・板厚50mmまで対応するヘビーデューティーな自動送り機で、大径・厚板の穴あけを一台でこなしたい現場向けのポジションと言えます。
固定された環境でひたすら大径穴を開けていくような用途では、AC駆動でパワーに余裕のあるQA-6500が有利です。一方で、H形鋼の上を移動しながら穴位置を変えていく、足場の限られた高所で作業する、といったシーンでは、BM36DAやCLO-2725のコードレス設計が効いてきます。電源の確保やコードの取り回しに頭を使わなくてよくなるので、「作業の段取り」よりも「穴あけそのもの」に集中しやすくなる感覚があります。
特にBM36DAは、マルチボルトシリーズの蓄電池を共有できるため、すでにHiKOKIのインパクトや丸ノコを持っているユーザーであれば、バッテリ資産をそのまま生かせるのも大きなメリットです。CLO-2725は日東工器ブランドのアトラエースとして、低背・軽量なボディと専用切削油によるスムーズな切削が魅力で、「アトラエースのフィールが好き」というユーザーに刺さる方向性。こうした背景を踏まえて3機種を比較していくと、「どの機種が最も高性能か」だけでなく、「自分の現場に一番フィットするのはどれか」が見えやすくなってきます。
比較表
| 機種名 | HiKOKI BM36DA (2XP) | アトラエース CLO-2725 | 日東工器 アトラエース QA-6500 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| 電源 | 36V マルチボルト蓄電池(2.5Ah / 5.0Ah) | DC36V リチウムイオンバッテリ(2.5Ah / 4.0Ah) | AC220~240V 単相 |
| モーター | 直流ブラシレスモーター | ブラシレスモーター | ACモーター 定格消費電力1010W |
| 無負荷回転数 | 820min⁻¹ | 820min⁻¹ | 低速400min⁻¹ / 高速750min⁻¹ |
| 最大穴あけ径(ジェットブローチ) | φ27mm(板厚25mmまで) | φ27mm(板厚25mmまで) | φ65mm(板厚50mmまで) |
| 最小穴あけ径(ジェットブローチ) | φ11.5mm(板厚20mmまで) | φ12mm(板厚6mmまで) | φ17.5mm(板厚9mmまで) |
| 最大板厚 | 25mm | 25mm | 50mm |
| 最大ストローク | 40mm | 40mm | 88mm |
| マグネット最大磁力 | 5.5kN(561kgf) | 5.5kN(5500N) | 9.8kN(1000kgf) |
| マグネット寸法 | 65×145mm | 65×145mm | 100×200mm |
| 本体寸法 | 369×149×138mm | 366×149×138mm | 455×215×534mm |
| 質量 | 9.1kg(バッテリ含む) | 9.0kg(バッテリ含む) | 26kg |
| 充電時間 | 約19分(実用)/ 約25分(満充電) | 約25分(2.5Ah使用時) | コード式のため充電不要 |
| 使用可能蓄電池 | マルチボルトシリーズ(BSL36A18X等) | DC36V 2.5/4.0Ah(BSL36A18 / BSL36B18) | 該当なし(AC電源) |
| 安全機能 | 板厚検知 / 負荷検知 / 本体浮き検知 | 板厚検知 / 負荷検知 / 本体浮き検知 | 横ズレ検知 / 負荷検知 / 再起動防止 |
| 送り方式 | 手動送り | 手動送り | 自動ステップ送り(全自動/手動切替) |
| ライト | LEDライト搭載 | LEDライト搭載 | なし |
| 付属品 | センタピン、送りハンドル、ベルト、チューブ、切削液、六角棒スパナ等 | キャリーケース、バッテリ、充電器、専用切削油等 | ジェットブローチ、パイロットピン、工具箱、切削油、サイドハンドル等 |
| 電源コード長 | コードレスのため電源コードなし | コードレスのため電源コードなし | 約5m |
| マグネット消費電力 | 蓄電池駆動のためAC消費電力表記なし | 蓄電池駆動のためAC消費電力表記なし | 75W |
| 定格電流 | 蓄電池駆動のためAC定格電流の表記なし | 蓄電池駆動のためAC定格電流の表記なし | 4.5A |
比較詳細
HiKOKIのBM36DA (2XP)を初めて現場に持ち込んだとき、まず強く感じたのは「コードがないだけでこんなに気持ちが違うのか」という解放感でした。従来のアトラエースCLO-2725やQA-6500では、電源コードとホースの取り回しをどうするかを先に考えるのが半ば当たり前でしたが、BM36DAはマグネットの位置決めさえ決まればすぐにトリガーを引けるので、段取りのストレスが一段階下がるイメージです。鉄骨の上を移動しながら穴位置を変えていくような場面でも、コードに足を取られる心配がないのは思った以上に安心感があります。
重量バランスもよく考えられていて、カタログ値では9.1kgと決して軽いわけではないものの、持ち上げた瞬間の「振り回しやすさ」はCLO-2725とほぼ同等で、従来のAC機に比べるとかなり軽快です。特に高所での作業では、片手でボディを支えてもう片方の手で送りハンドルを操作するときの安定感が重要になりますが、BM36DAはグリップ位置と重心が素直なので、変な力みが少なく作業できます。CLO-2725も低背・軽量で高所向きの機種ですが、BM36DAはマルチボルト蓄電池のおかげで「他の電動工具とバッテリを共用できる」という運用面のメリットが効いてきます。
実際にBM36DAで穴あけ作業を連続して行うと、トリガーを引いてから刃が素材に食い込むまでの立ち上がりが非常にスムーズで、回転の伸びも素直です。従来のAC機では、電源環境や延長コードの長さによって微妙に回転数が変わり、「今日はちょっと重いな」と感じることもありましたが、BM36DAでは終始同じフィーリングで回ってくれる印象があります。特に板厚25mm・径27mmクラスの穴あけでは、負荷が高くなった瞬間にブラシレスモーターと制御がうまく介入してくれるような感覚があり、「あ、今ちゃんと守ってくれているな」とわかるレベルでトルクが粘ってくれます。
QA-6500は、その点で方向性がはっきりしている機種です。26kgのヘビー級ボディに9800N(1000kgf)クラスのマグネットを組み合わせ、最大φ65mm・板厚50mmまでを自動送りでガンガン開けていく、いわば「据え置き寄りのポータブル機」。実際に使ってみると、自動ステップ送りが非常に優秀で、負荷に応じて送りをうまく調整しながら切削してくれるため、深い穴でも刃が悲鳴を上げにくい印象があります。ただし、このクラスになると本体の持ち運びや位置決めの自由度はどうしても犠牲になり、高所や狭所での作業にはあまり向きません。現場によっては「大径穴はQA-6500でまとめて加工し、移動を伴う少径穴はBM36DAに任せる」といった使い分けが現実的です。
一方、CLO-2725は「アトラエースらしいフィール」をコードレスに持ち込んだ機種という印象です。穴径12~27mm・板厚25mmまでの範囲であれば、BM36DAと同じような感覚で作業できますが、ボディの作りやノブの配置など、細部のタッチは日東工器らしい堅実さがあります。特に専用切削油との相性が良く、しっかり給油しながら使うと切り粉の排出がスムーズで、刃の負担も少ないと感じました。LEDライトの位置も実用的で、暗い現場でセンターピンの位置を追いやすいのはちょっとした違いですが、長時間作業では効いてくるポイントです。
騒音面で比較すると、BM36DAとCLO-2725はどちらもブラシレスモーター+ジェットブローチの組み合わせということもあり、耳障りなモーター音が少なく、切削音の方が主役になります。QA-6500はパワーに比例して音量もそれなりで、屋内や住宅街に近い現場だと少し気をつけたくなるレベルですが、その分「仕事している感」がものすごくあります。正直なところ、初めてQA-6500の自動送りを見たときは「このままほっといて大丈夫かな」と不安になるのですが、慣れてくると「材料と刃の状態だけ見ていればいい」と割り切れるので、長時間の単調な穴あけ作業の疲労はかなり軽減されます。
メンテナンス性という観点では、BM36DAはブラシレス+コードレスという組み合わせのおかげで、カーボンブラシ交換や電源コードの断線といった典型的なトラブルからほぼ解放されます。バッテリさえ健全であれば、定期的な清掃と注油をしておくだけで安定して使い続けられる印象です。CLO-2725も同様にバッテリ駆動で、マグネット部や送り機構の清掃・給油が中心。QA-6500は構造が複雑な分、クーラント経路や自動送り機構の点検が必要ですが、その代わり一台でこなせる仕事量は圧倒的で、「据え置き大型機を置けないが、なるべくパワーが欲しい」という現場には非常に頼もしい存在になります。
総じて、BM36DAは単なるスペックの優劣ではなく、「現場での体感」を一段階引き上げてくれる機種だと感じます。コードレスによる自由度、安定した出力、軽快な操作性が組み合わさることで、作業者の負担が減り、効率が上がり、結果的に安全性も高まるという好循環が生まれます。CLO-2725やQA-6500がそれぞれのポジションで強みを発揮する一方で、「一台で幅広い現場に持ち込める万能機」を求めるなら、BM36DAがもっともバランスの良い選択肢になりやすいと実感しました。
まとめ
実際に3機種を使い比べてみて、最も印象に残ったのはやはりHiKOKI BM36DA (2XP)でした。高トルクでありながら操作感が軽快で、板厚25mm・径27mmクラスの穴あけを繰り返しても、腕や肩の疲労が従来機に比べて明らかに少なく感じられます。特に高所や足場の悪い現場では、コードレスであること自体が安全性の向上にもつながり、「もうコード式には戻りたくないかも」と思わせる使い勝手でした。
次点として評価できるのがアトラエース CLO-2725です。最大径や板厚の仕様はBM36DAと近く、同じようなレンジの仕事をこなしつつ、アトラエースらしい堅牢な作りと専用切削油によるスムーズな切削フィールが魅力です。軽量・低背なボディのおかげで狭い現場でも取り回しやすく、「コンパクトなアトラをコードレスで使いたい」というニーズには非常にマッチします。ただし、バッテリ運用の自由度や他工具とのバッテリ共有まで考えると、マルチボルト対応のBM36DAに一歩リードを許す印象です。
日東工器 アトラエース QA-6500は、パワーと自動送り機構に全振りしたようなヘビーデューティー機で、最大φ65mm・板厚50mmまでを自動で削り切る能力はやはり圧巻です。その反面、26kgという質量とAC電源の確保が必要な点から、持ち運びや高所作業には向かず、「据え置き寄りのポータブル」と割り切って使うのが現実的。大量の大径穴を開ける工場や、ある程度設備の整った鉄骨加工場では非常に頼もしい一台ですが、汎用性という意味ではBM36DAやCLO-2725に譲る場面も多いと感じました。
総合的に見て、精度・操作性・快適性、そして現場での取り回しやすさという観点をバランス良く満たしているのはBM36DA (2XP)です。マルチボルト蓄電池の共用による運用コストの抑えやすさも含めて、「最初の1台」「どこにでも連れていける1台」として選ぶのであれば、BM36DAをベースに考え、よりコンパクトさやアトラエースのフィールを重視するならCLO-2725、ひたすら大径・厚板の自動加工に振り切るならQA-6500という棲み分けが現実的な結論だと感じました。
引用
https://www.hikoki.co.jp/
https://www.nitto-kohki.co.jp/
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