目次
比較概要
G3650EZ-25P16、GZ3950EZ-16RSPX35。どちらも現場での信頼を積み重ねてきた系譜の中にある機種ですが、今回の主役はGZ4350HEZ-18RSP_X35です。選び方の焦点は、一台に何を求めるかに尽きます。たとえば、朝の立ち木の一次切りから午後の小径の処理までを一台で通したいのか、作業のフェーズごとに得意領域を切り替えたいのか。扱いやすさの体感は、単なる数値でなく、手に収まる重心の落ち着き、トリガーの追従、再始動のテンポ、振動の質感といった連続した瞬間の積み重ねです。
短い休憩の後、再びチェーンを木肌へ当てるときの「迷いのなさ」は、現場の密度を左右します。そこで大切になるのが、操作系の素直さと、トルクの立ち上がりの自然さ。細い枝から、繊維の詰まった部位へと移る瞬間に、回転だけでなく刃の通りの変化が手首にどう伝わるか。静かな林間で風が抜ける中でも、騒がしい土場で音や視線が交錯する環境でも、同じ手順で迷いなく運べる一台は、作業フロー全体を整えます。今回の比較では、こうした体感の違いを、作業シーンごとに丁寧に切り分けます。
朝の冷え込み、湿った木肌、乾いた芯材、節の多い部位、連続作業による疲労。条件が重なるほど、機種ごとの個性が見えてきます。ページ後半では、それぞれが活きる現場の絵を具体的に描き、どの機種が「自分の仕事」に最も自然に馴染むかを明確にしていきます。実際に三機種を持ち替えながら試したとき、「今日はこの現場だからこの一台で行こう」と迷いなく選べる感覚は、数字だけを眺めていても得られません。
比較表
| 機種名 | ゼノア GZ4350HEZ-18RSP_X35 | ゼノア G3650EZ-25P16 | ゼノア GZ3950EZ-16RSPX35 |
|---|---|---|---|
| 画像 | |||
| メーカー | ゼノア | ゼノア | ゼノア |
| エンジン形式 | 空冷2サイクル | 空冷2サイクル | 空冷2サイクル |
| 排気量 | 43.1cc | 36.3cc | 39.1cc |
| 出力 | 2.3kW | 1.9kW | 2.0kW |
| バー長さ | 45cm(18インチ) | 63cm(25インチ) | 40cm(16インチ) |
| チェーンタイプ | 3/8ピッチ | 3/8ピッチ | 3/8ピッチ |
| 燃料タンク容量 | 0.43L | 0.41L | 0.41L |
| オイルタンク容量 | 0.27L | 0.25L | 0.25L |
| 始動方式 | EZスタート | EZスタート | EZスタート |
| 点火方式 | デジタル制御 | デジタル制御 | デジタル制御 |
| キャブレター | ダイヤフラム式 | ダイヤフラム式 | ダイヤフラム式 |
| 防振機構 | ハンドル防振 | ハンドル防振 | ハンドル防振 |
| 重量 | 4.9kg | 5.2kg | 4.7kg |
| チェーンブレーキ | 搭載 | 搭載 | 搭載 |
| スプロケットタイプ | ノーズスプロケットバー | スプロケットバー | ノーズスプロケットバー |
| 推奨用途 | 中径木伐採 | 大径木伐採 | 中径木伐採 |
| 排気ガス規制対応 | 国内排ガス規制適合 | 国内排ガス規制適合 | 国内排ガス規制適合 |
| チェーンテンショナー | サイドアクセス | サイドアクセス | サイドアクセス |
| スターターハンドル | ソフトスタート仕様 | ソフトスタート仕様 | ソフトスタート仕様 |
| 製造国 | 日本 | 日本 | 日本 |
比較詳細
ゼノアのGZ4350HEZ-18RSP_X35を数日使い込んでみて、最初に感じたのは中速域での粘りが非常に力強く、材への食いつきが滑らかに続くことです。いったん刃が入れば回転の落ち込みが少なく、厚みのある木口でもスムーズに線を維持できるため、意図した切断ラインからブレません。引き起こしから体に寄せる一連の動作で姿勢が崩れにくく、腕への負担が軽く感じられました。振動は適度に抑え込まれていて、長時間の作業でも指先の痺れが残りにくく、終了後の疲労感が明らかに軽いです。始動性も安定しており、冷間でも扱いに戸惑うことなく、作業のリズムを崩さない安心感があります。
実際、冬場の朝イチに霜の残る土場で使ったときも、チョーク操作から二〜三回のリコイルで素直に立ち上がり、エンジンが温まるまでの間も回転の付き方が読みやすいと感じました。タンク一本分を連続で回してもトルクの腰砕け感が出にくく、「今日は最後までこのテンポで押し切れるな」と思わせてくれる一台です。
G3650EZ-25P16と持ち替えると、扱いの軽快さは魅力的で、取り回しの速さが光ります。小径の枝払い、狭い場所での姿勢変更、切り返しの連発では、手の延長のような俊敏さがメリットになります。反面、太い材に刃を深く入れたとき、負荷が上がる場面では回転の落ち込みが出やすく、切り進みのテンポが途切れがちです。押し切るよりも刃先の角度と送りのリズムで負荷を逃がしつつ切るイメージが必要で、作業者の技量に応じた工夫が求められます。短時間の作業では爽快なのですが、長丁場になると意識的に負荷管理をする回数が増え、集中力の消耗が早まる印象がありました。
GZ3950EZ-16RSPX35は、G3650EZほど軽さ一辺倒でもなく、GZ4350HEZほどガツンと押し切るトルクの塊でもない、中庸の仕上がりです。軽快さと粘りのバランスが程よく、枝払いから中径の玉切りまで、一台で幅広くこなす際の気楽さがあります。切り始めの立ち上がりが素直で、材に触れてからの加速が過不足なく、余計な反動が出にくいので、初動のミスが減ります。負荷をかけたときの回転の戻りも一定で、切断面の粗さが揃いやすく、仕上がりの美しさが安定しました。
改めてGZ4350HEZに戻すと、刃を押し込む際の安心感が別格です。厚い節や硬めの材質でも切り進みが途切れず、力を掛けた分だけ前へ進む感覚が掴みやすい。送りを少し速めても刃が暴れにくく、材が重くても姿勢が保てるので、作業ペースを一定に維持できます。自分の体感では、刃が詰まりそうな場面で一呼吸置かずに抜けられる確率が高く、無駄なリカバリーが減って全行程の所要時間が短くなりました。音の質も耳障りになりにくい帯域に収まるため、精神的な疲れが少ないのも好印象です。
G3650EZの魅力は、機体の軽さと反応速度が連動して、刃先のコントロールが直感的に決まるところです。軽やかな身のこなしで刃の角度を細かく調整しながら流れるように切っていけるため、枝が入り組んだ現場や足場が不安定な場面で強みを感じます。ただし、材が太くなるほど送り速度の調整がシビアになり、回転を保つための「待つ」間合いが必要になります。この間合いを掴めば十分に戦えますが、急いで押し切ろうとすると刃が跳ねやすく、結果的に仕上がりが荒れてしまうことがありました。「急いで終わらせたい日ほど、あえて一拍置く」ような気持ちの余裕が求められる機体とも言えます。
GZ3950EZは、体の使い方に対して素直な反応を返すため、疲れる前に結果を出したい日には最適です。切り込み時の粘りが均一で、材への入り口が綺麗に整うので、その後の切り進みが楽になります。取り回しも重すぎず軽すぎず、両手の位置を変えてもバランスが崩れないため、斜め切りや角度をつけた切断でもラインの維持が容易でした。操作に対する機体のレスポンスが読みやすく、初級から中級への橋渡しとして、技術の底上げに寄与するタイプです。「とりあえずこれを持っていけば大きな失敗はしない」と思わせてくれる安心感があります。
三機種を並べて材を替えながら切っていくと、GZ4350HEZは負荷の山で踏ん張れるので、作業全体のテンポが落ちません。GZ3950EZは負荷変動に対して穏やかに応答し、小刻みなテンポで積み重ねる作業に向きます。G3650EZは機動力で勝負するスタイルで、刃を素早く動かして切断ポイントを細かく刻むような現場で武器になります。目的が明確なほど、どの機体が自分のリズムに合うかがはっきりしてきます。
フィット感の違いもはっきりしました。GZ4350HEZはグリップを強めに握っても力が逃げず、引き起こしてからの保持が安定します。GZ3950EZは握力に頼りすぎず、手の平で支えるイメージでバランス良く構えられました。G3650EZは指先の細かな操作が効くため、微小な角度調整が楽しく、刃先の感覚がダイレクトに伝わります。どれも扱いやすいのですが、作業姿勢や好みで体感が変わります。
チェーンの掛かり方は、GZ4350HEZが刺さるような鋭さを持ちながら、唐突な引き込みが少なく、意図したラインのまま進みます。GZ3950EZは角が立ちすぎず、材を舐めるように入っていき、切断面が均整に揃いました。G3650EZは最初のひと噛みが軽快で、枝払いのテンポを崩さずに次へ移れるため、流れ作業が気持ちよく続きます。用途ごとの美点が異なるため、現場のシナリオに合わせて選ぶ楽しさがあります。
反動の収まりは、GZ4350HEZが一歩抜きん出ています。負荷の波に乗っても復元が早く、刃を戻すときに姿勢を取り直す必要が少ないため、手数が減ります。GZ3950EZは反動のピークが穏やかで、戻りのスピードが一定なので、安定した作業者ほど利点を実感できます。G3650EZは軽量さがメリットでもあり、振り回しすぎると跳ねが出るため、操作の丁寧さが品質を決めるタイプです。
使い終わった後の身体の疲れ方にも差がありました。GZ4350HEZは作業中の姿勢が崩れにくく、肩と腰の負担が分散されるため、長時間の連続作業でも翌日に残る疲労が軽い傾向です。GZ3950EZは全体の荷重が均等で、局所的な疲労が蓄積しにくい印象でした。G3650EZは短時間で結果を出す現場なら極めて快適ですが、連続して重い材に向き合うと、集中力の維持に工夫が必要と感じます。「今日は軽めの仕事が中心だな」という日には、G3650EZを選ぶと体へのダメージを抑えやすいと感じました。
日常のメンテナンス性にも軽く触れておきます。三機種ともサイドアクセスのチェーンテンショナーを採用しているため、現場での張り調整はスムーズです。オイル量と燃料タンク容量のバランスも大きくは変わらず、給油タイミングの取り方も共通化しやすい印象でした。小さな点ですが、このあたりが揃っていると、複数台を並行運用するときに段取りがシンプルになり、結果的に作業密度の底上げにつながります。
用途別おすすめと選び方
用途別に整理すると、選び方の軸がよりはっきりしてきます。太材や節の多い材を長時間相手にするなら、GZ4350HEZ-18RSP_X35のトルクと粘りが心強い武器になります。伐倒から玉切りまで一台で押し通したい現場では、「ここで力負けしないだろうか」という不安が浮かびにくく、作業者の判断を前向きに保ってくれます。
枝払い主体の現場や、足場が悪くてこまめに姿勢を変える必要がある日なら、G3650EZ-25P16の軽快さが活きます。私自身、山の中腹で細い枝を延々と払っていく作業の日には、G3650EZの「振った分だけ素直に付いてくる」感覚にかなり助けられました。高負荷域での粘りでは上位二機種に一歩譲るものの、細径材の処理量という観点では、この軽さが確かなアドバンテージです。
作業内容が日替わりで変わる現場や、「今日は何が来るか読みにくい」という日には、GZ3950EZ-16RSPX35が頼りになります。軽さと粘りが中庸にまとまっているおかげで、極端な得手不得手が出にくく、「とりあえずこの一本を積んでおけば大きく困ることはない」と思える一本です。技量のステップアップ段階でも扱いやすく、自分の癖を把握しながらチェーンソーの動き方を学びたい方にも向いています。
実務的な視点で言えば、「年間を通してどんな材を一番多く相手にしているか」「一日あたりどのくらいの時間をチェーンソーと向き合っているか」を思い浮かべると、自分に合う軸が見えやすくなります。高負荷・長時間ならGZ4350HEZ、軽快な枝払い中心ならG3650EZ、何でも屋としての一本ならGZ3950EZという整理が、現場の実感としてもしっくりきました。
まとめ
総評は次のとおり。まず最も作業密度を高めたのはGZ4350HEZ-18RSP_X35(総合点9.4)。中速域の粘りと高出力の余裕が両立し、伐倒から玉切りまでの切断テンポが崩れない。私の現場では、太めの広葉樹でも回転の落ち込みが小さく、刃が材に吸い込まれるような手応えが長く続いた。振動は許容内で、姿勢制御も素直。「仕事が前に進む」感覚が明確で、段取りの修正が減る。
次点はGZ3950EZ-16RSPX35(総合点9.0)。コンパクトさに対して中速トルクが厚く、枝払いから中径材まで気持ちよく刻める。軽快さと安定のバランスが良く、長丁場でも疲労の蓄積が穏やか。取り回しの速さが作業リズムを保ち、細かな姿勢の切り替えにも追従する。三番手はG3650EZ-25P16(総合点8.6)。軽快な取り回しと素直な始動で、立木整備や焚き木作りのような細径材主体の仕事に合う万能選手。高負荷域では丁寧な刃当てが必要だが、軽さが全体の疲労を確かに抑え、時間当たりの処理量を安定させる。
ベストチョイスはGZ4350HEZ-18RSP_X35。中速域での粘りと切断の継続性が、現場の段取りをスムーズにし、総合的な作業効率を一段引き上げる。一方で、どの機体も環境や刃の状態、作業者の癖で体感は変化しますが、三機種を往復して使った中では、GZ4350HEZは粘りと安定で他を引き離し、GZ3950EZは整った応答で作業品質を底上げし、G3650EZは軽快さで時間を短くします。日々の現場に持ち込むなら、自分の作業時間帯、材の種類、求める仕上がりを思い浮かべ、三機種の性格と重ね合わせてみてください。切り終えた面の美しさ、作業のリズム、帰路の身体の軽さ――そのすべてが、機体選びの正しさを静かに教えてくれます。
引用
https://www.zenoah.com/jp/chainsaws/gz4350ez/
https://www.zenoah.com/jp/chainsaws/gz3950ez/
https://www.zenoah.com/jp/chainsaws/g3650ez/
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