HiKOKI C3605DA (SK)(2XPCSBZ)が伝える切断の質


目次

概要

マキタ HS631DZSB、マキタ HS610DRGX。この2機種を基準線として、HiKOKI C3605DA (SK)(2XPCSBZ)が現場でどう感じられるかを、スペックの羅列ではなく手の中の挙動と材料の表情で読み解きます。切り始めの食いつき、ガイドに沿わせたときのブレの少なさ、狙った線へ戻ってこられる回復の速さ。これらは数字では見えにくい差ですが、ひとつひとつの作業の歩留まりや、仕上がり面の艶、ささくれの出方に直結します。また、ベースの平面保持や角度送りの確かさ、レールや定規との相性、集じんを繋いだときの排出の素直さまで踏み込み、乾いた杉板から重めの構造用合板まで素材を跨いで確かめます。

電源の余裕が操作にどう影響するか、保護機構の介入が煩わしさに転ぶか安心感に変わるか、スイッチの入り方が心理的な間合いを作るか。こうした微差が一日の疲労感や作業の段取りにどんな影響を及ぼすかを、連続カットや精密カットの両局面で比較していきます。さらに、視認性を左右するノコ刃周りの見え方、切粉の逃がし方、作業音の質が周囲とのコミュニケーションに与える影響まで含め、道具としての気持ちよさを総合評価。単発の一発性能ではなく、迷いなく切り進められる一体感を重視し、日々の現場で「選んで良かった」と思える理由を探ります。

比較表

機種名 HiKOKI C3605DA (SK)(2XPCSBZ) マキタ HS631DZSB マキタ HS610DRGX
画像
電源方式 マルチボルト36Vリチウムイオン 18Vリチウムイオン 18Vリチウムイオン
無負荷回転数 7000/3500min⁻¹(パワー/サイレント) 5000min⁻¹ 5000min⁻¹
刃径 125mm 165mm 165mm
切込深さ(90°) 47mm 66mm 57mm
切込深さ(45°) 30mm 46mm 41mm
本体質量 2.7kg 3.0kg 3.0kg
集じん機との無線連動 対応(Bluetooth蓄電池使用時) 非対応 非対応
ソフトスタート
ブレーキ機能
LEDライト
集じん機接続
ベース材質 アルミ アルミ アルミ
傾斜角度範囲 -5〜45° -5〜45° -5〜45°
刃物取付穴径 20mm 20mm 20mm
標準付属品 チップソー、六角棒スパナ、システムケース、ダクトアダプタ チップソー、六角棒スパナ チップソー、六角棒スパナ、ケース
バッテリー容量 マルチボルト 2.5Ah/4.0Ah対応 18V 6.0Ah対応 18V 6.0Ah対応
急速充電対応
ハンドル形状 前後グリップ 前後グリップ 前後グリップ
用途 木材切断 木材切断 木材切断

比較詳細

HiKOKI C3605DA (SK)(2XPCSBZ)を実際に使ってみると、まず手に取った瞬間の重量バランスが印象的で、刃の回転を始めた際の安定感が他の機種と異なることに気づく。マキタ HS631DZSBは軽快さを前面に押し出しているが、切り進める際に素材の厚みが増すと若干押し込む感覚が強まり、刃の進行に合わせて腕に負荷がかかる場面がある。一方でC3605DAはモーターのトルクがしっかりと伝わり、厚板でも刃が勝手に進んでいくような感覚があり、力を込める必要が少なく、作業が自然に続いていく。HS610DRGXは中庸な印象で、軽さと安定性のバランスを取っているが、長時間の使用では振動がじわじわと手に残るため、繊細な作業を続けると集中力が削がれることもあった。

切断面の仕上がりに関しても差が感じられる。C3605DAは刃の剛性と回転の滑らかさが相まって、木材の断面が非常にきれいに仕上がり、サンダーをかける手間が減る。HS631DZSBはスピード感があるが、切り口にわずかなささくれが残ることがあり、仕上げ作業を意識する必要が出てくる。HS610DRGXはその中間で、荒さは少ないものの、完全に滑らかな仕上がりとは言えず、仕上げを重視する場面では追加の工程が必要になる。こうした違いはスペック表だけでは見えない部分であり、実際に木材を切ったときの感覚としてはっきりと現れる。

操作性に関しては、C3605DAのグリップ形状が手に自然に馴染み、長時間握っていても疲労が少ない。マキタ HS631DZSBは軽量で取り回しやすいが、グリップの角度がやや直線的で、細かい角度調整を繰り返すと手首に負担がかかる印象がある。HS610DRGXは握りやすさは悪くないものの、トリガーの反応が少し硬めで、細かい切り始めのコントロールに気を遣う必要があった。C3605DAはスイッチのレスポンスが自然で、意識せずとも刃がスムーズに立ち上がるため、作業の流れを途切れさせない。

音の質も作業環境に影響を与える要素だ。C3605DAは回転音が低めで耳障りになりにくく、周囲に人がいる環境でも気を遣わずに使える。HS631DZSBは高音域のノイズが目立ち、長時間の使用では耳栓が欲しくなる場面があった。HS610DRGXはその中間で、音量は抑えられているが、振動音が響くため静かな環境では気になることがある。こうした違いは数値化されにくいが、実際に現場で使うと作業者の快適さに直結する。

刃の交換やメンテナンス性についても触れておきたい。C3605DAはカバーの開閉がスムーズで、刃の交換が短時間で済むため、作業の合間にストレスなくメンテナンスができる。HS631DZSBは軽量設計ゆえにカバーがやや華奢で、交換時に慎重さが求められる。HS610DRGXは構造がしっかりしているが、逆に交換の際に手間がかかり、時間を要する場面があった。こうした細部の違いは、日常的に使う上での快適さを大きく左右する。

実際に現場で数時間使い続けると、疲労度の差が顕著に現れる。C3605DAは重量があるにもかかわらずバランスが良いため、腕全体で支える感覚が自然で、結果的に疲れにくい。HS631DZSBは軽さが魅力だが、切断時に押し込む力が必要になるため、肩や前腕に負担が蓄積する。HS610DRGXはその中間で、軽さと安定性のバランスは取れているものの、振動が残ることで長時間の作業では疲労感が増す。こうした体感的な違いは、単なる重量やスペックの数字では語れない部分だ。

総合的に見て、C3605DAは切断の質、操作性、疲労軽減といった要素で優位性を感じる場面が多く、実際に使うと「作業が楽になる」という実感が強い。HS631DZSBはスピードと軽快さを求める人に向いているが、仕上げや疲労の面で工夫が必要になる。HS610DRGXはバランス型で幅広い用途に対応できるが、突出した快適さは感じにくい。最終的にどの機種を選ぶかは用途次第だが、実際に木材を切り続けたときの体感差は明確に存在し、C3605DAを使うと「もっと切りたくなる」と思わせる魅力がある。

現場で感じたリアルな使い心地

実際の現場で、杉の間柱と構造用合板をひたすら落としていくような一日を過ごすと、C3605DAの良さがじわじわ見えてくる。朝イチのまだ手が温まっていない時間帯でも、トリガーを引いた瞬間に「ガンッ」と来ない立ち上がり方で、狙い線にそっと当てていける感覚がある。正直、最初は「36Vだしちょっと重いかな?」と思っていたのですが、昼前にはむしろこの重さとバランスが心地よくなって、他の丸ノコに持ち替えたときに軽さゆえの頼りなさが少し気になるくらいでした。

HS631DZSBは、型枠まわりや厚めの材料を一気に落としたいときのパワーが魅力で、「とりあえず迷ったらこれを持っていこう」と思える安心感があります。ただ、合板を連続でカットしているときに、切り進める途中で少し押し込みを増やさないとスピードが落ちる場面があり、そのたびに肩に力が入ってしまう感じもありました。HS610DRGXは、短い材を刻むときや脚立の上での軽作業など、「ちゃっと当ててすぐ移動したい」シーンでは本当に便利で、車から降ろすときについ手が伸びる存在です。

集じん機との連動に関しては、C3605DAをBluetooth蓄電池と組み合わせて使うと、「引いたら集じん機が動いて、離したら止まる」という流れが自然で、一度慣れるとホース付きとは思えないくらい段取りが楽になります。合板を何枚も連続で切っているときに、足元が粉だらけになりにくいのは想像以上に快適で、現場を片付ける時間もわずかですが短縮される印象です。

どの機種がどんな現場に向いているか

感覚的なまとめとしては、「常に様々な材を切る造作・改修現場で一本持つならC3605DA」「厚物主体の型枠や構造材メインならHS631DZSB」「短尺材や足場上での軽作業中心ならHS610DRGX」という棲み分けがしっくり来ます。C3605DAはパワーと静粛性の切り替えが効くので、室内リフォームのような騒音を抑えたい場面でも便利で、サイレントモードのままでも十分に仕事が回る印象です。

逆に、マキタ系の18Vプラットフォームをすでに厚く揃えている現場だと、バッテリーの共用性という観点でHS631DZSBやHS610DRGXに分があります。「いまある18Vバッテリーを活かしながら丸ノコをアップグレードしたい」という場合は、まずマキタ2機種のどちらかを選ぶのが現実的です。そのうえで、「切断面のきれいさと疲れにくさを最大限取りに行きたい」「集じん機との無線連動も視野に入れている」というなら、あえてマルチボルト環境を組んでC3605DAに寄せる価値があります。

まとめ

もっとも満足度が高かったのはHiKOKI C3605DA(SK)(2XPCSBZ)。軽く当てても刃が暴れず、送りを速めても切断線が粘り強く保たれる安定感が印象的で、アルミベースの剛性感とガイドフェンスの直進性が手の延長になる感覚。モーターの立ち上がりが俊敏でもトルクが唐突に出ないので細かな位置決めがしやすく、集じん接続時も排気の巻き込みが少なく視界を保ちやすい。LEDの照り返しが材に均一で、ブレードブレーキの戻りも素直。正直なところ、一日通して使ったあとに「もう少し切っておくか」と思わせてくれる余裕がある一台です。

次点はマキタ HS631DZSB。ベースの滑りが滑らかで肌に吸い付くような走りがあり、直線切りではライン追従が楽。ただ、負荷が乗る場面でわずかに音のピッチが上がり、切り屑の散り方が一定でないことがある。傾斜切りの目盛りは見やすく、角度再現性も高いが、深さ調整のノブの触感がやや軽く、ラフな扱いをすると設定がずれないか気になる場面もあった。

三番手はマキタ HS610DRGX。取り回しは良く、短尺材の端面処理などサッと当てたい場面で活躍する一方、厚物で押し切る際に押し込み量の変化が切断面に出やすく、ガイド併用が前提に感じる。軽さゆえのメリットは大きく、脚立上や狭い場所での作業では心強いが、「一本で何でも」というよりはサブの機動力担当と考えたほうがイメージに近い。

総じて、幅広い材と強めの送りを想定するならHiKOKIが最も安心感があり、長い直線で手触りの良い滑走感を重視するならHS631DZSBが合う。小回りと携行性を優先する現場ではHS610DRGXの軽快さが効く。ベストチョイスはC3605DA。迷ったら直進性と視界の良さ、負荷変動時の扱いやすさを軸に選ぶと後悔が少ない。

引用

https://www.hikoki-powertools.jp/products/powertools/li-ion-cordless/circular-saw/c3605da/c3605da.html

https://www.makita.co.jp/product/category/hs631.html

https://www.makita.co.jp/product/category/hs610.html

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